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  • 2018/02/02

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    ウイグルにて 5

    ウルムチに滞在している間に少し戻ってトルファンにも立ち寄った。
    来る時にも何となく外の景色を眺めていたらそれまでの殺風景がトルファン市街に入ると色のある街の光景に変わったことに心動かされるも、列車の途中下車はオレの本文ではないという変なポリシーが災いして降りそびれていた。そのことを後悔したくなくてふらりとトルファンを観光した。
    適当にご飯を食べて、適当にチャイをすすりながら、現地の人たちや外国人と情報交換をする。
    とりあえず教えてももらったトルファンの離れにある古代都市の遺跡を見に行くことにした。
    街からバンで砂漠を走ること約2時間、砂とともに完全に風化している廃墟となった古代都市がそこには眠っていた。
    パッと見ただけではこの街がかつてどのように栄えていたのかは想像すらできないくらい辺りは砂と岩だけで完結されていて、風化し尽くすだけの時間の流れを感じずにはいられなかった。
    街の死んでいる光景はどこか残酷でもあったけど、帰り際の橙色の夕日に映る廃都は幻想的だった。彷徨う魂の様子が目に見えるかのような影のある街の陰影が物語る時間の痕跡はとても美しかった。
    トルファンの街の外れの荒野にはどこへと向かっているのかわからないけど、どこかに向かうためにあるであろう道があった。
    その先には何もなかった。
    それでも谷と谷とに挟まれ、周囲には石と大地としかないその道を馬を引いて歩いていく人がいた。
    自動販売機やコンビニやスーパーどころか舗装された道路も飲んでも大丈夫な川さえも見当たらない。何にもない。
    でもそれはオレが何も知らないだけなのだ。
    その先にはいくつもの峠があって、谷があって、川もあり、集落があって、国境があったりするのだろう。
    巨大な山脈の向こうに何があって、何が見えるのか。何の鳥だかはさっぱりわからないけど、上空高く翼を広げて舞っている。
    5000メートルはあるであろう山に向かっていくあの翼は超えることはできるのだろうか。もしかしたら鳥には吹き降ろす風と同様に吹き上げる風というのも視覚的に見えているのかもしれない。鳥には鳥の目があって、オレにはオレの目がある。
    オレはオレ自身のための目を養わなければならない。
    こうして決して優しくはない荒れ果てた土地における旅の最中で、遥か遠くに想いを馳せる自分の姿にずっと憧れていた。ユーラシア大陸の中枢、アジア西域の果てに自分が何を見出すのかを思ってきた。夢にも見たことがある。遊牧民たちが馬とともに駆けてきただろう人工物が何ひとつとして視界に入ることのないその土地を訪れる自分が盗賊に襲われ、身包み、金品を奪われ、水を失い、それでも荒野の大陸で巨大な何かに追われる救いのない悪い夢を・・・。  
    丸い地球に世界の果てはどこにもないのだけど、世界はこんなにも遠くて遥かなるものだったのかを思い描くことのできる土地に立つことができた。
    ただ、遠くへ行くことだけを目的にしたオレの旅心はそれだけでずいぶんと満たされているのを感じていた。

    5/5