旭川のスカッシュレッスンスクール「旭川スカッシュハウス」
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2017/12/30
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『目が覚めると三日月』 1
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「英語ペラペラとか、外国に行ってたの?」
「あ?何言ってんの?ってなんだ?だれ?アミ?」電気の消えた暗いままの部屋の中に誰かがいる・・・
三日月亜美だ。
寝ぼけ眼の状態でも枕下に行儀よく正座してるアミのことはすぐにわかった。ここ数年ずっと耳にしてきた聞き慣れたアミの声と、薄暗い空からの微かな光に照らされる、どこか見慣れたシルエットが非常に完全にアミだった。
でも何かが変だった。
そんな洞察が必要のないくらいに、そこにいるのがアミであることを私には何となくだがわかっていた。とても歯痒い不思議な感覚がした。ついさっき、これとまったく同じようなことを経験してきたような、してないような、でも何かが違う、というズレが急激に何も違わないものへと変わっていく不思議な感覚だった。「よっ!」
「よっ!じゃねえよ」
「泣いてるよ」
「え?あ、ホントだ。泣いてら、よくあるんだわ」
「泣き虫だったんだね」
「うるさいよ」
「あい、すいません」
「分かればよい。だがな、おまえ・・・何しに来たんだよ・・・」と私はアミの予測不能な奇行に愕然とさせられる。
「いやいや、妹がインフルエンザに罹ってしまってさ、家出してきたさ」三日月亜美は私の家から歩いて10分くらいのマンションに妹といっしょに生活している。
ちなみに、私、葉月伸は8万2000円、1LDKのアパートにひとりで暮らしている。誰かがいたこともない。29歳独身一人暮らし。
モテないこともないのだが、いわゆる経済的な不安や狡猾な女性への不信を理由に結婚についてはあまり考えないようにしている最近の標準的な草食系男子というやつだ。「おまえな、いくら私と仲良しだからって、音も立てずに猫みたいに寝床にいられたらびびるぞ」
「そうかな、あんまり驚いてるように見えないし、むしろわたしみたいに小さくて、若くて、かわいい女の子が自分の部屋に突然現れることなんてシチュエーションは独身男子にとっては夢のようなことなのでは?というわけで、もっと喜んでくれ」
「さっ、帰ってくれないかな・・・」
「スマン。行くところがなかったさ」
「そりゃそうだろうな!なぜなら!朝なのか夜なのかもわからない4時前だからな!太陽だってまだ寝ぼけてるよ!部屋に入れてくれる奴もまずおらんわ」
「でも、葉月さんは入れてくれた」
「違う。おまえが勝手に入ってきたんだ」
「まあまあ、とりあえず鍵をかけもしないでギャーギャー言ってもらってももう遅いので今晩のところはこうして寝袋を用意してきたわけだから一晩泊めさせてくださいな」
「おい、なんだその意味の分からない文脈からの私が悪いみたいな落としどころは」
「そうか、助かるぞ。感謝する」とペコリとしたアミはテキパキと持参してきた寝袋を私の布団の横に並べている。
「ったく、好きにしろ、私は寝る」この小さくて若い25歳独身女子はローランドゴリラに似ている。
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