旭川のスカッシュレッスンスクール「旭川スカッシュハウス」
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2017/01/01
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『目が覚めると三日月』 3
3
さっきまで見ていた夢のことの方がまるで昨日のことのように、まるでいつも通りのことのように感じていた。こうして横になって穏やかな寝息を立てているアミのいる今のほうがよっぽど夢のように思えていた。
覚めても覚めやらぬ夢を見たのは初めてのことではない。しかし、目が覚めて思い出す夢というものは現実とは別個の絵空事として無意識の内に自分でもどこだか知らない所に寝かされていくものなのだが、今朝のものに関してはアミのいきなりの訪問もあってのことで軽く動転し、興奮していたにもかかわらず鮮明なのである。
さっきまで見ていた夢には時の流れがあり、温もりがあり、触れることのできた確かな感触があった。それでもその感触も事実も今にしてみればどう考えてみたところで何もかもが夢だったのだ。
それが昨日までの過去の記憶とさっきまで見ていた夢の記憶との間にどの程度の違いがあるものなのか・・・
その区別が曖昧なままに信じられないでいる夢の名残とアミの信じられない奇行によってすっかり私の感覚は覚醒されていた。目の覚めてしまった私はアミの包まっている寝袋の上に私の布団をかけて、アミに気づかれないようにそっと起き上がった。そのまま皮ベージュのシングルソファーチェアに腰掛ける。
それにしても、なんという座り心地だろう・・・としみじみ思う。
今でも思う。
私の理想の椅子だ。
360度回転し、リクライニング機能と肘掛もついて、足も伸ばせるこのソファーチェアはおまけに寝心地までいい。もう3年以上は使っているのに、その実力は衰えを知らず、確固たる存在感を示している。
自分の部屋に合った大きさ、色、機能を兼ね備えたソファーを買うにはそれなりのセンスを必要とする。
お金を出せば良いというものではないのだ。
自分に合った音楽、洋服や車というのも同様だ。
大切なのは想像力で、部屋のソファーというのはその人となり、品格が滲み出ることになる。
当たり前の話だが、至福とは物そのものにはなく、それを手にした所有者の状態のことを言うのだ。
プライスレスな至福のソファーチェアに深々と身を委ねた私はさっきまで目を閉じて見ていた、あまりにリアルな夢のことをそこら辺にあったノートに書き残すことにした。
わずか数分の間に、窓の外の暗かった空は白々と光を反射している。黒から藍、藍から青になる。黒から青への朝4時の鮮やかな晴れ上がりの様子はまるでいつかに見た北極圏の白夜の風景のことを思いながらペンを執る。
私の目と肌で感じてきたはずの現実世界の経験は案外とあやふやなのに、ついさっきまで自分の見ていた夢のことをありありと思い出すことができる。過去と夢の映像、記憶にとってどちらが重要なことなのかがわからなくなる。「葉月さん・・・エントロピー・・・」
は?
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